頬粘膜がん
どんな病気か
頬粘膜は、上下口唇の粘膜面、頬の粘膜面、臼後部(きゅうこうぶ)および上下頬歯肉溝(きょうしにくこう)(口腔前庭)からなり、ここに発生するがんを頬粘膜がんといいます(図8)。全口腔がんの約10%を占め、50歳以上で、とくに高齢者に多く、またやや男性に多い傾向があります。好発部位は、臼歯部咬合面に相当する部位です。組織学的には扁平上皮がんが圧倒的に多いのですが、小唾液腺(しょうだえきせん)から発生する腺系がんもみられます。
原因は不明ですが、この領域には白板症(はくばんしょう)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)などの白色病変が比較的多く発生することから、これらとの関係が指摘されています。また、口腔粘膜がんに共通する喫煙、飲酒などはその危険因子にあげられています。そのほか、歯の鋭縁や義歯(ぎし)による外傷も関連する因子とされています。
主な自覚症状は腫脹(しゅちょう)(ふくらんでいる)と疼痛(とうつう)です。がん病変部の楓ハは潰瘍を形成したり、乳頭状になります。がんが深部へ浸潤(しんじゅん)(侵入)すると開口障害を来します。さらに進行すると、皮膚やあごの骨に浸潤します。また、頸部リンパ節への転移は20〜50%に認められ、その多くは顎下(がくか)リンパ節や上内深頸(じょうないしんけい)リンパ節の腫大として現れます。遠隔の部位への転移を認めることは多くありません。
確定診断には生検(病変の一部を採取して顕微鏡で調べること)が必要で、組織学的診断により行います。がんと確定した場合には、X線、CT、MRI、超音波などの画像診断を行い、がんの進行度(病期)を決定します。
区別すべき疾患としては白板症、紅板症(こうはんしょう)、扁平苔癬などがあり、生検による組織学的診断と長期にわたる経過観察が必要です。外傷性潰瘍が疑われる場合には、その原因を除去して2週間経過を観察し、治る傾向がなければ生検が必要になります。
早期がん(T1、T2症例)に対しては、手術あるいは放射線治療を行います。手術では、病変周囲の健康な組織を含めて切除します。放射線治療では、とくに組織内照射(病変内に放射線源を埋め込んで限られたところだけに放射線を照射する)が有効です。
進行がんでは手術を要し、がんが顎骨(がくこつ)や皮膚に浸潤している場合には顎骨や皮膚を含めた拡大切除が必要になります。切除後の欠損は前腕皮弁(ぜんわんひべん)、前外側大腿皮弁(ぜんがいそくだいたいひべん)、肩甲骨皮弁などの組織移植を行って再建します。また、頸部リンパ節への転移に対しては、頸部郭清術(かくせいじゅつ)(頸部のリンパ組織を取り除く手術)を行います。5年生存率は60〜70%と比較的良好です。
疼痛などの異常な症状に気づいたら、まず自分で口腔内を観察したり触ったりしてみます。前述の疑わしい病変が認められた場合には、ただちに口腔外科などの専門医を受診して、専門的な検査や治療を受ける必要があります。
(執筆者:小村 健)
